オーディション番組でよく歌われる、アレサ・フランクリンの『Think』について

The X Factor や The Voice などのオーディション番組で
番組出場者に歌われることの多い名曲はいくつもある
世界各国のオーディション番組をくまなくチェックしていなくても
特定の国のみで言っても「この曲は前にも聞いたぞ?」となることは多々あることだろう

今回は、オーディション番組で歌われることが多い
アレサ・フランクリンの名曲『Think』について
知っておいた方が良いんじゃないか? と思うことを書いていこうと思う

アレサ・フランクリンの曲は、基本的に女性がカバーすることが多く
男性がオーディション番組で彼女の曲を歌うことは稀である
ソウルの女王アレサ・フランクリンの歌唱力があまりにも高く
また、ソウル歌唱のイメージがあまりにも強いため
パワフルな歌唱が出来る女性でなければ合わない、という事もあるし
生半可な歌唱力ではアレサと比較され、飲み込まれるからだろうと思われる
とは言え、この曲に関しては、単に技術的な問題だけでなく
歌詞の内容にも、男性が歌いづらい理由があるようだ

実は2つのバージョンがある『Think』
さて、まず最初に知っておかなければならないことは
この曲には「二つのバージョンが存在している」という事である
一つは、1968年に発表されたオリジナル版のバーションである

今でこそ、ブルース・ブラザーズ版が有名であるが
この曲は元々、当時のBillboard Hot 100 で7位に達するほどヒットした名曲であり
アレサ自身と、当時の夫であるテッド・ホワイトの共同で作られた歌である
元の編曲は、かなりゆったりとしたリズムの曲であり
歌詞に書かれてある言葉一つ一つを噛みしめながら
ゆっくりと誰かに言い聞かせるような歌い方の曲となっている

オーディション番組では、こちらのバージョンで歌われることもある
というか、実はこちらのバージョンの方がよく歌われていたりする
が、一般知名度は後年のアレンジ版だと思うし
両方のバージョンをミックスしたものの方が多いような気はする
例えば、イントロはオリジナル版で初めて、締めはアレンジ版
といった具合の、良いとこどりをされることが多いと思う

もう一つが、1980年の映画『The Blues Brothers』で
リメイクされたバージョン
である

オーディション番組で、もっぱら歌われているのが、こちらのバージョンである
オリジナルのバージョンからさらに1分長くなったこちらの編曲は
全体的に元の曲よりもアップテンポになり、曲の雰囲気も派手になっている
映画のワンシーンの為に歌い直したバージョンだから、という事もあり
華やかなこちらの編曲では、アレサの歌唱は多彩な感情表現が含まれている
決して、テンポが速い方と言うだけでなく、様々な歌唱技法を要する
より歌唱難易度の高いアレンジを加えられているが
一つの枠や規格に収まらない、アレンジの上手さが魅力でもある
アレサらしい歌唱にもなっていると言えなくもない

『Think』ってどんな歌?
では、『Think』とは一体どういう歌詞の曲なのか
それについては、とても上手く和訳をしているサイトが二つあるので
それらを紹介しておこうと思う

『Think』単体の和訳
ひびき唄あかり唄なごみ唄〜Feel Good Songs さん
http://amariacari-feelgoodsongs.blogspot.com/2011/02/think.html
別の翻訳サイトに太鼓判を押されている和訳なので
楽曲単体で歌詞の内容を知りたい場合はこちらを読まれると良い
オーディション番組で歌われているのも、こういう内容を想定していると思われる

歌詞65度の冬 さん
http://nagi1995.hatenablog.com/entry/2017/08/04/170714
こちらは、映画『ブルースブラザーズ』の劇中歌としての『Think』を考察するために
ミュージカル歌唱が始まるまでの、登場人物たちのやり取りから翻訳をしている
そのため、映画を見ていなくても、ある程度、映画のあらすじも理解できると思う
大事なのは、ブルースブラザーズの劇中歌としての使われ方が
この曲の歌詞本来のメッセージとは違っているという点である
それも、別の解釈がある、と言うより……

また、情報量がかなり多いが
和訳の後に、非常に分かりやすく、かつ参考になる歌詞の解説と考察がされており
こと『Think』の解説サイトでこの場所の右に出るサイトは存在していないと思う
それゆえに、先にこちらを読んでから、上記単体和訳サイトを読むのがベストだと思う
単体和訳サイトの方を絶賛しているのは、こちらの和訳サイトでもある

ちなみに、ブルースブラザーズ版アレンジは
オーディション番組においては、あくまでアレンジの一つであり
歌われる際の背景に関しては、アレサが言いたかったことを念頭に
出場者たちが各々思うところを歌に乗せているのだろうと考えられあるので
あくまで「参考」にして頂けたらと思う

『Think』の背景について
上記和訳サイトでは、歌詞の内容について詳しく書かれてあるので
私が下手に和訳して説明するよりも、そちらを読まれる方が
正確に歌詞の内容を把握できると思う

ここでは、歌詞の内容ではなく、曲が作られた背景について、少し触れておく

この曲の歌詞の内容については
アレサが女性の自由と平等と敬意を歌ったフェミニストの賛歌である、とされている
歌詞を読んでも、そうした意味合いが伝わってくるのだが
ではなぜそうした歌詞を、夫テッド・ホワイトと共同で製作したのか
アレサのそれまでの人生の中に、そのヒントとなる出来事がある

アレサの父親クラレンス・ラヴォーン・フランクリンは牧師で
母親はバーバラ・シガーズ・フランクリンというゴスペル歌手なのだが
アレサが6歳の時、母バーバラは家を出ていってしまう
これはクラレンスの度重なる不貞行為が原因であるとされている
また、アレサ自身も14歳の時に第一子を、翌年には二人目の息子を生んでいる
息子たちを祖母に預けた彼女は、息子たちの父親については、誰にも言っていないそうだ

こうした出来事が、男性に頼ることなく、女性の力で独り立ちする
というこだわりを、アレサに持たせるに至ったのではないか、と考えられているそうで
そうした人生経験の上に、『Think』という曲が生まれたのだとも言われている

実際、アレサは2004年には自身のレーベルAretha's Records を立ち上げているそうだし
87年に女性初のロックの殿堂入りを果たしていることをはじめ、数々の受賞歴を持ち
年代的に黒人歌手で活躍していること以上に
女性の社会的地位を向上させるのに一役買っているだろうと思われるため
そうしたことを念頭に置くと、1968年に『Think』を発表したこと
あるいは、この曲を歌った人物としてのイメージが崩れないことからも
その人生経験ゆえに、揺れることのない信念を持っていることがうかがえる
ある意味、アレサの人生を象徴としているような楽曲なのではないかとも思われる

これらの情報を知っているのと、そうでないのとでは
オーディション番組でこの曲を歌う出場者が、どんな気持ちで歌っているのか
その見え方が大きく変わってくるだろうと思う

オーディション番組における『Think』

前述の通り、この曲はオリジナル版と華やかなブルースブラザーズ版(以下BB版
その両方の良いとこ取りをしたアレンジで歌われることが多い
しかし、オリジナル版、BB版、ミックス版、いずれの場合においても必要なのは
極めて高い歌唱力と声量、そして意志力の強さである
元を歌っているアレサの歌唱が非常に強烈で
ゆったりとしたテンポのオリジナル版であろうとも
アップテンポで聴くのが楽しいBB版であろうとも
言う事を聞かない男性に女性の強さをぶつける様な
男性に舐められない心の強さと迫力が必要になっているが
かといって、ヒステリックになっている、と思わせてはいけなくて
意味なく怒鳴るのではなく、根拠を持って冷静にシャウトするという事である
ただ喚き散らすのではなく、女性の尊厳をかけて物申す
と言った、メッセージ性を持たせて歌う必要があるという事かもしれない

ただし、ベースにしているのがオリジナル版か、BB版かによって
この辺りの加減は大きく変わってくるとも言える
The Voice UK 2012のバトルラウンドでの歌唱は

バトルラウンドという性質上、大人しく歌うわけにはいかず
また、ベースを映画『ブルースブラザーズ』版にしている為
始終、力強いぶつかり合いになっているし、ド迫力の歌唱となっている

一方で、The Voice of Poland 2017 でのライブパフォーマンスは

ベースをオリジナル版にしている為
自分が伝えたいメッセージがしっかりと伝えることが第一で
勢いや声量にものを言わせるような歌唱にはなっていない
時には、曲を壊すことなく、聞き手に歌をぶつけるのではなく
かといって、力を入れなさ過ぎて、曲に飲まれないように歌う必要があるようだ

それともう一つ、重要なことは、この曲を歌うタイミングである
ライブショーでバックコーラスがつくタイミングで歌えば
原曲通りのコーラス付きバージョンで歌うことができるが

ブラインドオーディションで歌うともなると
コーラス不在による違和感と戦うことになるだろう
フランス版2013のNadja は、この辺りを上手く克服しており
歌い出しこそ物足りない歌唱と思わせつつも
徐々に自分なりのアレンジを加えていくことで
歌うことが難しいこの曲を自分のものにしてしまっている

ライブでは二度と同じ歌い方が出来ないと言われているほどに
アレサ・フランクリンがアレンジに強い歌手でもある為
単にアルバム版の歌い方をそのままマネするようでは
アレサの曲の良さを伝えきることができないし
どれだけ上手くてもカラオケ歌唱になってしまうだろう

その他、オーディション番組ではこんな風に歌われている
The Voice of Greece 2017 Dorida Chioti
https://www.youtube.com/watch?v=BnUUkrgFAq8
The Voice Iceland 2016 Soffía Karlsdóttir
https://www.youtube.com/watch?v=P3sn_tsg7t8
The Voice UK 2016 Brooklynne Richards
https://www.youtube.com/watch?v=ytLOl0Win-A
The Voice France 2016 Beehann
https://www.youtube.com/watch?v=NZYmPOvijAs
The Voice Chile 2016 Javiera Flores
https://www.youtube.com/watch?v=srIWU0zs0fY
The Voice Nigeria 2016 A’rese
https://www.youtube.com/watch?v=WwU1LzvNSIU
The Voice of Croatia 2015 Jacques Houdek & Karla Krmpotić (余興)
https://www.youtube.com/watch?v=qqnYW0Let9E
The Voice Of Greece 2015 Patritsia Amprachams VS Angel Karatsami
https://www.youtube.com/watch?v=i24hjWLJ0Oo
The Voice Chile 2015 Paulina Burgos
https://www.youtube.com/watch?v=GXDXRZBvr6I
The Voice Arabia 2014 Sahar Seddiki
https://www.youtube.com/watch?v=k-p8uPSD0GA
The voice of Holland 2014 Ferry de Ruiter
https://www.youtube.com/watch?v=37ipUF6ckrU
The Voice Australia 2014 Tahlia Tabone
https://www.youtube.com/watch?v=Fu2I8KLXfsY
The Voice Israel 2014 Tamara Peretz
https://www.youtube.com/watch?v=aqg4ncx0Pds
The Voice Russia Kids 2014 Polina Bogussevich
https://www.youtube.com/watch?v=fWEBP7aPeII
The Voice Hungary 2012 Fehér Adrienn VS Veres Mónika
https://www.youtube.com/watch?v=qXV-ZUqGoHA
The Voice France 2012 Stéphan Rizon
https://www.youtube.com/watch?v=ftPc1FpHOCo
The Voice of Poland 2011 Monika Urlik
https://www.youtube.com/watch?v=5UXClixqQi0

Britain's Got Talent 2017 Destiny Chukunyere
https://www.youtube.com/watch?v=J6MCjwG4mhM
The X Factor 2011 Amelia Lily
https://www.youtube.com/watch?v=AdDxRvF6gH4
The X Factor Bulgaria 2017 Ioanna Dimitrova
https://www.youtube.com/watch?v=1x1hq1OCIfY

この曲が収録されているアルバムはこちら


参考文献
ULPT - 『ソウルの女王』『歌姫の中の歌姫』はどうやって誕生したのか?
http://ulpt.web.fc2.com/artist/a/aretha-franklin/index.html
華氏65度の冬 - Think もしくはブルースブラザーズ特集#14 (1968. Aretha Franklin)
http://nagi1995.hatenablog.com/entry/2017/08/04/170714
ひびき唄あかり唄なごみ唄〜Feel Good Songs - THINK!
http://amariacari-feelgoodsongs.blogspot.com/2011/02/think.html

SIX VOICES (全英文)
How a movie made ‘Think’ by Aretha Franklin even more popular
https://sixvoices.wordpress.com/2017/03/15/why-think-by-aretha-franklin-got-so-popular-twice/


オーディション番組でよく歌われる名曲の知識を深めよう! もくじ記事
http://sheilabirlings.blog33.fc2.com/blog-entry-5139.html
関連記事
楽曲紹介激烈難易度曲ArethaFranklinThinkTheXFactorTheVoice

2Comments

Chisacaco  

明けました。

おめでとうございます!

今度はここに来ています。
『オーディションでよく歌われてる歌』
シーラさんのブログを見つける前にどこからどうたどり着いたのかは忘れたんだけど
シーラさんがアップしてる「ナチュラルウーマン」を見て
歌ってるの誰?歓喜してる女性誰?
どうしてこんなに大喜びしてるの?
しかもオバマまでいるし。
と、謎だらけだったんだけど面白い!と思って友だちに見せて回ったことを覚えてる。

その動画ここで見つけた時は今度は私が歓喜しました。
キャロル(おかげでこの女性誰?の謎が解けた)よりは控えめだったけどね(^^)

そんなこんなで私の旅はxfactorやvoiceから逸れてるけど
ここから他の国のvoiceに飛んだりするのでそれはそれで面白い!

そうそう、楽しいことがありました!
元旦にベッドの中でたぶんxfactorかな?おさらいをしながら眠ってしまったんだけど
夢の中で私はシーラさんにいろいろ質問してた!
つまり初夢って訳です。
しかもどこか地方の公民館の畳の敷いてある大広間で(^^)

ということで
今年もよろしくお願いします。

追伸 音楽無知な私は普段はコメントはできないんだけど
コメント欄も含めてこのサイトの大ファンです。

2019/01/04 (Fri) 10:30 | EDIT | REPLY |   

シーラ B  

Re: 明けました。

> Chisacacoさん
あけましておめでとうございます!

> 『オーディションでよく歌われてる歌』
このシリーズ、結構書きたいネタが沢山あるんですけど、中々できていないw
知って欲しい意外な小話とか、私が知りたい歌手の事とか色々ありますからね

> どうしてこんなに大喜びしてるの? しかもオバマまでいるし。
完全に私と同じ反応をしているwww
私も、調べたり人から教えてもらうまでは
ほとんど同じような状態で
「なんかすごいことになってそうだけど、よく分からねえ」
状態だったので気持ちがよく分かりますww

> その動画ここで見つけた時は今度は私が歓喜しました。
お役に立てたようでとっても嬉しいです!

> そんなこんなで私の旅はxfactorやvoiceから逸れてるけど
> ここから他の国のvoiceに飛んだりするのでそれはそれで面白い!
一つの曲に絞って、色んな国で歌われている
違うバージョンを聞き比べるのも面白いですからね
『Smells Like Teen Spirit』や『Seven Nation Army』辺りとか
元のロックらしいアレンジじゃなく
あえてジャズや他のジャンルに変えてしまうパターンとかありますし
そういう楽しみ方も面白いと思います

> 夢の中で私はシーラさんにいろいろ質問してた!
あら~~~~~~嬉しいやらこっぱずかしいやら/////

> しかもどこか地方の公民館の畳の敷いてある大広間で(^^)
ほあっ!?wwww なんで!?wwwww
特別講師みたいな感じで、Chisacaco の夢に御呼ばれしたんでしょうかね

> 今年もよろしくお願いします。
こちらこそ、今年もよろしくお願いします!!

> 追伸 音楽無知な私は普段はコメントはできないんだけど
> コメント欄も含めてこのサイトの大ファンです。
コメントに来てくれる人たちのコメントも楽しんでもらえてるのすごく嬉しいです!
このブログにコメントを残してくれる方々、みんないい人たちだし
特定の国に関する知識や情熱が強い人が多くて
そういう人たちが来てくれるの、このブログの誇りなので

2019/01/04 (Fri) 23:54 | EDIT | REPLY |   

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